【短】笑顔のままで
ドキン、と跳ねあがる心臓。
冷や汗に近いものが身体中の毛穴から一気に噴き出す。
その汗の上を、生ぬるい夜風が滑るように通り過ぎていった。
ドクン、ドクン、ドクン
俺の視線の先には、懐かしい君の姿がある。
心臓がまたアルコールを全身にいき渡らせていくが、それすらも感じさせないくらい、頭はしっかりと君の姿を焼きつけていく。
あの頃より少し痩せたのか、それとも、化粧の腕をあげたのか、久しぶりに見た君は随分と綺麗になっていた。
ホームにある色褪せたベンチに腰掛け、携帯を握りしめたまま考え込む君。
泣いているようにも見えた。