【短】笑顔のままで
とっさに柱の陰に隠れた俺は、すかさずポケットから携帯を取り出し君の番号を探した。
握りしめていた携帯が震え驚いた君は、ディスプレイを見つめて考え込んでいる。
そこには俺の名前が表示されているだろうか。
それとも、番号だけになってしまっているのだろうか。
どちらでも構わない。
早く出てくれ。
長いこと呼び出し音を聞かされたあと、
『…もしもし』
久しぶりに聞いた君の声に明るさは感じられなかった。
「オレ、オレ!誰だかわかる~っ?」
とっくに酔いなんてさめてるくせに、はしゃいでみたりして。
コホン、と咳払いが聞こえたあと、君が俺の名を口にした。