【短】笑顔のままで

「ピンポ~ン!正解!」

柱の陰からそっと様子をうかがうと、君は呆れ果てた顔をしてベンチに深く座り直した。


『…なに?なにか用?』

そんな君の冷たい言葉にもめげず、

「元気にしてるかな~と思って。かけちゃった」

酔ったフリをして話し続ける。


『…元気よ。とーっても』

右耳のピアスに手を持っていく君。

電話してるときの君の癖だ。

相変わらずの仕草を目にして、胸の奥がきゅっと締めつけられた。


懐かしくてたまらない。


「そっかそっか。元気ならいいんだ」


胸の奥からじわじわと湧き上がってくる想いで、胸が苦しくなった。

< 6 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop