【短】笑顔のままで
『えっ?なんで…っ?』
驚いた君の声に反応した俺は、柱の陰に隠した身体をさらに小さく丸めた。
「あ…。声が、……声に元気がないから」
今はただ、自分の存在を隠すことしかできなかった。
元気出せよ、と言って肩を叩いてやれたら、どんなにかいいだろう。
久しぶりだね、と君の前に姿を現したなら、何かが変わっていたのかもしれない。
だけど、そんな度胸も資格もない俺は、ただ君の視界に入り込まないように、できるだけ身体を小さくするんだ。
『ちょっと、…ケンカしちゃっただけ。あんたに関係ない…』
だんだんと小さくなって消えてしまいそうな声の持ち主に、
「まぁ、ケンカなんて、よくあることさ」
そんなありきたりな言葉を贈る。