◆◇嘘つきなカラダで恋に溺れる王子と姫の物語◇◆(仮)
1◆甘ったるい初体験は、檻の中
まず最初におかしいと思ったのは、靴を履いていたはずの足から、ひんやりとした床の冷たさが伝わってきたこと。
その次に、窓から差し込む薄暗い光と、キラリと光る銀色の手錠。
外はもう、夕方だった。
しっかりと目を開いて下を見ると、真っ白で高級なワンピースを着た自分のカラダ。
そこで意識がはっきりとしてきて、今まで眠っていたことに気がついた。
瞬きを数回、そして周りを見渡してみる。
さっきまで街の市場にいたはずなのに、ここは見覚えのないお屋敷の一室のようだ。
広い空間、高級な雰囲気と、センスのいいインテリアの数々。
そんな中にひとつだけ、異様な光景。
そう、手錠で両手の自由を奪われた私。
腰に打ったような痛みがあるため、このベッドから落ちてしまったのかもしれない。
手錠にベッド・・・。
ゾッとする組み合わせだった。
「ここ、どこ・・・」
半ば泣きそうな声で、私はつぶやいていた。