◆◇嘘つきなカラダで恋に溺れる王子と姫の物語◇◆(仮)


次の瞬間、右頬に、ヒヤリとした冷たい感覚がよぎった。


ポチャン、という水の揺れる音と共に。


「え・・・わっ・・・!」


驚いて、カラダのバランスを崩してしまった私は、ドサリと倒れ込んでしまった。


「水、飲みなよ」


落ち着いた、男らしい声。


声が聞こえたほうを、恐る恐る見上げる。


「喉渇いてんじゃねーの?」


整った顔立ち、かっこよくセットされた黒い髪、潤った瞳。


「なあ、聞こえてる?」


意地悪く微笑んだ表情、背の高い、鍛えられたカラダ、危険な雰囲気。


「お~い」


王子様のような彼は、水の入ったグラスを持った右手を、私に見せるようにゆらゆら揺らしているところだった。


何が起きたのかが全く理解できない私は、ただただ彼をじっと見つめることしかできなかった。


「だ、だれ・・・?え・・・?てゆか、ここどこ?」


寝っ転がったまま、彼を見上げて私は聞いた。
< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop