◆◇嘘つきなカラダで恋に溺れる王子と姫の物語◇◆(仮)
「思い出した?俺のこと。」
「え・・・?」
不敵にニッコリ笑う彼の顔を見ても、なあんにも思い出せない。
目を細めて眺めてみても、声を聞いても、どう考えても初めて会ったばかりの男だよね・・・?
「わか・・・りません」
遠慮がちに、答えた。
もし思い出せないだけで、あったことがある人だったら申し訳なくて。
「ふーん。そっか」
そう言って、彼はいきなり右手を伸ばしてきた。
それにつられてビクっとなるカラダ。
彼の右手が私の左耳に触れた。
「・・・ひゃっ」
くすぐるように、優しく指の腹でなぞられる。
ビクッと反応し、肩をすくめて逃げようとしてみた。
それでも彼の右手は付いてくる。
「ちょ・・・と!!やめ・・」
耳にゾワゾワした感覚と、電流が走ったように、頬が急に火照る。