復讐ストーカーゲーム1
「俺には彼女がいますので、そういうのはチョット……」


「いいのよ。私も旦那がいるんだし、お互い様じゃない? ただ……そのう」


彼女が俺の両手を手に取り、目を潤ませ、下から見上げる。暖かく柔らかい手。ぞくっと電流が走った。


女の人の手を触ったのは、中学時代、運動会でフォークダンスを踊った以来だ。あの時も物凄く汗をかき、どぎまぎと緊張をした。


「なにをしているんだ仕事中に! 竹下君、さぼっているんじゃないよ!」


「て、店長! こ、これは違うんです。

あのう、松田さん。俺、レジ付近の掃除をしながら、お客様の対応をしていますね……」


「ちっ! 怠けられては困るよ? 君は大量に買い物をしてくれるから大目に見ているけど、さぼりは許さないからね?

松田さんは俺と一緒に在庫チェックだ。休憩室に来なさい」


「はーい!」


松田は俺に、軽くウインクを投げかけ、ゴメンネという表情をし、店長と共に狭い休憩室へと消えていった。


――まさか、レジ横の休憩室でなにかするんじゃないだろうな? あんなメス猫、こちらから願い下げだ! 


なんであんなバーコードハゲに、舌打ちされなきゃいけないんだ?


くそ! くそ! くそ! 世の中、いつだってこうなんだ! 不公平で渦巻いているんだ!
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