復讐ストーカーゲーム1
 ぎゅっと傘を握り締め、覚悟を決めた。


高級店で食事をしたことは、生まれてからまだ一度も無い。なぜなら大食漢には、向いていない店だからだ。どんな空気で、どういった流れなのか一切分からない。


――き、緊張する。


足を踏み出し、自動ドアが開いた。


「いらっしゃいませ、お客様! ……?」


丁寧に会釈をした黒服が、改めて全身を舐めるように見ると訝しげな面持ちになった。


店内に視野を広げると、明らかにセレブ感漂う静かなムードだった。場違いがという言葉が頭を過ぎる。


「お客様、どういったご用件で?」


黒服は食事をしに来たんではないと予測したようだった。
< 606 / 887 >

この作品をシェア

pagetop