復讐ストーカーゲーム1
「ローンにします。普段なら現金でぽーんとこのくらい出せるんですけどね、ちょっと今月は物入りで……

月2万円くらいの返済で、組んで貰えますか?」


「かしこまりました。書類をお持ちしますね」


店員は今日一番の微笑を浮かべ、奥にいる従業員に指輪の包装を依頼した。年増の店員は、ローンを組む用紙を準備しているらしい。


月に2万の返済。それくらいならなんとかなるだろう。生活費を払っている訳でも無いし、苦しくなったら親父に頼もう。


あんなに素晴らしい指輪を眼にしたら、苺は飛び跳ねて喜び、キスぐらいはしてくれるかなぁ? この頼もしい体を抱きしめてくれるかなぁ?  


妄想が広がり、ヨダレが出そうになった。


「……お客様? 大丈夫ですか? こちらに詳細をご記入ください。

印鑑はお持ちですか? 無ければ拇印で構いませんので、こちらに捺印をお願い致します。

ご本人様、確認書類もご用意していただけますか?」


「あ、すみません。ちょっとぼーっとしてしまって、分かりました。免許証で良いですよね、あります」


ローンを組むのは初めてだった。こんなに簡単に高価な物が買えるなんて知らなかった。


「はい、これで大丈夫ですよ。うちのお店は審査も通りやすくスピーディーで、そこも人気の秘密なんですよ。グリーンティーをお飲みになって、少々お待ち下さい」


年増の店員は契約を成立させようと、奥へと素早く引っ込んだ。すれ違いに、若く綺麗な女性が冷たいお茶を運んできた。


美人の女性はみんな苺に見えてくる。早く会いたい……豪華な指輪を見せてあげたい。結婚式はどこにしよう――。
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