復讐ストーカーゲーム1
 扉まで歩を進めたが良い表現が浮かばなかった。黙り、言葉を探していると絵恋が見上げ、急に睨んだ。


「私の周りでもあるけど、信介さんの周りでもあると思わない? ……うちの実家に行ったんでしょう? お母様に聞いたのよ。なにしに行ったの?」


「……それは」


口を噤もうとしたが、異様な気迫に言葉を止むを得ず続けた。


「秋雄のお見舞いに来てたみたいだから、病室がどんな様子だったのかを知りたかったんだよ……」


「で、うちの親はなんて言ったの?」


目が血走り、鋭い眼差しを向ける絵恋は、やはりいつもと様子が変だった。


なにも知らないって言っていたよ……それと絵恋さんに戻ってきて欲しいみたい。寂しいって――」


「嘘吐き!!!!」


絵恋は扉を拳で一発強く叩いた。そして眼光を鋭くし見据えた。


「……それってどういう意味――」


問いかけようとすると、絵恋は有無を言わせず被せてきた。


「嘘吐き!!!! 嘘吐き!!!! 嘘吐き!!!! 嘘吐き!!!! 嘘吐き!!!! ――」


「止めてよ絵恋さん。本当に知らないんだ」


「嘘吐き!!!! 嘘吐き!!!! 嘘吐き!!!! ――」


「ごめん、絵恋さん調子が悪くて……もうちょっと寝るね、本当にごめんよ」


一向に止みそうもない叫びに、耳を塞いで無理やり会話を遮断し扉を閉めた。すると「嘘吐き」の掛け声は停止した。
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