幸せの掴み方
あの時、もし私が勇気を出して、圭祐に聞いていたら、離婚してなかった
かも知れない・・・・もしかしたら、すれ違っていなかったのかも知れない。

そんな思いを、柚葉は抱きながら、

「圭祐・・・圭祐だけが悪いんじゃないの。
 私が、もっと自分の気持ちをはっきりと言わなかったのがいけないの・・・・
 
 あの時、私は、逃げたのよ・・・・圭祐に、『お前はいらない』って
 言われるのが怖くて・・・・」

「柚葉・・・・・・」

圭祐も柚葉も、あの時は、どうにもならなかったのだと思った。

今、こうして時が経ち、二人それぞれが変わったが故に、お互いが
歩み寄って、こうして話すことが出来ているのだと・・・・

「でも、圭祐、ありがとう、来てくれて・・・・・
 
 真之介の顔を見てやって・・・・菜々美にそっくりだよ・・・・・」

圭祐は、柚葉に促されて、ベビーベットで寝ている真之介の顔を
覗き込んだ。

「本当だ・・・・・菜々美の小さい頃とおんなじ顔だ・・・・」

柚葉は、『菜々美とそっくり=圭祐とそっくり』を、あえて菜々美と
そっくりと、圭祐に言った。

柚葉は、目の前にいる圭祐の纏っている雰囲気が、随分柔らかく
なっていることが、嬉しい反面、悲しくもあった。

自分と一緒に居た時にはなかったものだ・・・・・

やはり、自分は圭祐を幸せにすることは、出来なかったのだと痛感し
心が、痛んだ・・・・
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