World Walker
通話ボタンを押す。

りせのスマホに、世界を渡り歩く旅の途中で電話をかけてくる相手など一人しかいなかった。

だからりせは『声を弾ませる』。

「もしもしっ?マー君っ?」

『やぁりせ、嬉しそうな声だね』

電話の向こう、男の声が聞こえた。

低く落ち着いた声の感じからして30代前半から後半。

大人の男性という印象を受ける。

見た目ハイティーンのりせから見れば、父親に近いともいえる年齢差だが。

「う、嬉しくなんてないわよっ、何で私がマー君の電話で喜ばなきゃいけない訳っ?」

ツンを見せるりせの表情は、明らかに照れが混じっていた。

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