World Walker
「ち、ちょうどよかったわ!」

何という幸運。

これで山の中で野宿という最悪の事態だけは免れる。

「私、この土地の人間じゃなくて旅してる者なんだけどさ…道路一本外れて山の中入ったら迷子になっちゃって…元の道に戻れなくて困ってたの。できれば今すぐにでも食事とれてお風呂入れてゆっくり眠れる場所に案内してくれないかしら?」

初対面だというのに要求が多いのが、りせの世間知らずな所。

そんな彼女を。

「…………」

女性は見る。

その視線というのがまた変わっている。

人間の姿形でありながら、まるで動物の目。

一挙手一投足を余す事なく観察するような、不穏な動きを見せれば即座に『行動』に移るぞと言わんばかりの。

道端で遭遇した野良猫が、こちらを警戒している時の目。

何だか胸の中に嫌なものを感じ始めるほどの時間、凝視された後。

「ほぅ、そうじゃったか。それは難儀じゃったのぅ」

女性はクルリと踵を返し、しゃなりしゃなり、と歩き出す。

バックに雅な弦楽器のBGMでもかければよさそうな、そんな足取り。

「ついて参れ」

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