World Walker
しかし、最早後戻りは出来ない。

りせが力を緩めれば、彼女の命は葬送の炎によって消し飛ばされてしまう。

かといって、ここで姫羅木が退けば誰がりせを止めるのか。

尤も、この戦い自体が姫羅木の勘違いから始まったものなのだが。

「そ、葬送の炎の出力を理解したとは…満更法螺でもなさそうじゃの…」

りせとの鬩ぎ合いを続けながら姫羅木が言う。

四尾に蓄えた神通力の相当量を、もう放出してしまっている。

神通力を放出するという事は、狐霊の力を放出するという事。

大量の神通力を失えば、狐霊の証たる尾が一本減り、二本減り…やがて全ての尾が神通力の放出によってなくなる時、姫羅木は天狐どころか狐霊ですらなくなる。

ただの狐に戻ってしまうという事だ。

それが姫羅木の言う『葬送の炎の制約』。

威力こそ高いが、おいそれと葬送の炎を行使できない理由だった。

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