World Walker
りせが、クッと小さく声を上げる。

『終末の光』をようやく押さえ込んで消耗しているというのに。

それでも降りかかる火の粉は払わなければならない。

身構えようとするりせを。

「!」

ルドルフが無言のまま制する。

「この女は俺の所有物だ。奴隷にする為に人間界から攫ってきた」

『誰が奴隷よ』と、りせが恨みがましい視線をルドルフに向ける。

が、ここは住人達の言い掛かりから逃れる為に黙っておく。

…ルドルフの所有物となれば、他の連中が手出しできないのは普通当然。

しかしここは魔界だ。

そんな人間界の常識など通用しない。

欲しければ奪う。

それが他人のものだろうが、人格ある人間だろうが。

所有者を惨殺してでも奪う。

それが魔界の流儀だ。

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