World Walker
まだこれ程の魔力が残っていたのかと目を見張るほどの、膨大な魔力。

牙を剥き、目を血走らせ、中には鈍器や刃物といった凶器を手にした者もいる。

そんな連中を目の前にしても一向に怯む事なく。

「Ein Phänomen, eine Annullierung(事象、無効化)」

ルドルフは呪文詠唱する。

…それはまさしく魔法だった。

牙を剥いている者も、目を血走らせている者も、鈍器や刃物といった凶器を手にした者も。

『全て消えた』

焼き尽くされたとか、微塵に刻まれて原形を留めなくなったとか、そういう事ではない。

ただ漠然と『消滅した』。

全てがなかった事のように『無』と化す。

ルドルフ・クラインリーゼ・リリアという人物の身に今現在起きている全ての現象を『なかった事』に出来る魔法。

『世界』に干渉する魔法。

莫大な魔力と引き替えに、あらゆる事象を無効化できる、ルドルフが行使できる中では最上級の魔法の一つ。

流石に消耗が激しいのか、ガクリとその場に跪いた後。

「これで…心置きなく去れるだろう」

ルドルフは何食わぬ表情でりせに言った。

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