World Walker
ガサリ。

草むらを掻き分け、出てきたのは大きな狼だった。

平均的な狼よりは一回り大きい。

鋭い牙を覗かせ、こちらから視線を逸らさずに唸り声を上げる。

りせとヘヴンを射抜くように見つめる、赤い眼…。

「わかるか、りせ」

声を低くしてヘヴンが言う。

「ただの狼ではない…あの狼からは魔力の残滓を感じる…上手く獣態に化けているつもりだろうが、魔物特有の臭いまでは消せていない」

「…来栖の手下かしら?」

りせも警戒し、身構える。

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