World Walker
指も、二の腕も。

リルチェッタの体つきとは不釣り合いなほどの大きさ、太さ、筋肉量。

まるで右腕だけ巨人の腕でも移植でもしたかのように不自然なアンバランスさだった。

咄嗟に拳打を回避したりせだったが、驚きは隠しきれない。

「禁書か」

ライガン、クレオの猛攻を退けつつ、ヘヴンが呟く。

1800年代、科学者を志したスイスの名家出身の青年が、故郷を離れてドイツで自然科学を学び、狂気すら孕んだ研究の末、完成させた『理想の人間』の設計図。

人体を改造し、怪物じみた容姿と力を身につけさせる為の設計図。

それを裏の世界では『禁書』と呼ぶ。

そしてその『禁書』を作り上げた人物の名は、ヴィクター・フランケンシュタイン。

リルチェッタの正体は人間である事を捨て、復讐の為だけにその身を改造されたフランケンシュタインの怪物だった。

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