World Walker
「その前に、俺をここまで追い詰めた者に敬意を表してやろう」

来栖はりせの耳元で囁く。

「りせ、吸血によってその自我が崩壊する前に何が言っておく事はあるか?遺言代わりに聞いておいてやろう…その言葉は、貴様の愛しいマスターに伝えておいてやる」

いわばマー君から、りせを寝取るような形か。

下卑た感覚に悦楽を感じる来栖。

「そうね…最後だから…」

りせは一度俯き。

「来栖、私の目を見てくれる?」

「そんな事か、お安い御用だ」

勝者の余裕か、敗者への哀れみか。

肩越しに振り返るりせの瞳を、来栖は見つめる。

…それがどんな意味を持つかも知らないで。

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