World Walker
戦闘は続いていた。

血のぬめりで柄が滑り始め、刃毀れで切れ味の悪くなった剣を捨て、りせは槍のみでの戦術に切り替えていた。

素早く刺突を放ち、複数…二桁近い兵士を瞬時に行動不能にする。

武器を弾き、剣を握る手の腱を切り、足を貫いて立てなくして。

殺す必要はない。

要するに動けなくすればそれでいいのだ。

でないと。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」

何せこの数だ。

全員まともに相手していたのでは、りせの体力がもたない。

現に。

「くっ!」

集中力が乱れてきたのか。

時折矢がりせに命中する。

既に数本の矢が、彼女の体に刺さっていた。

甲冑を着ているものの、鎧の継ぎ目に命中しては防げない。

槍を回転させて防御する余裕もなくなってきていた。

だというのに。

「っ…!」

帝国本国から、更なる鈍色の一団が接近してくるのが見えた。

「増援…!」

< 93 / 456 >

この作品をシェア

pagetop