恭&綾~【恭&綾シリーズ】1
「――わたしの存在価値ってなんだろうって思ったの。誰かに必要とされたいって思ったの。でも、誰がわたしを必要にしているかって考えても、誰も浮かんでこなかった。それなら、今わたしが必要としている人は? ――そう考えたの」
「――うん」
「話を聞いてくれる人が欲しかった。だから、比較的仲が良かった友だちを訪ねてみた。でも――」
「聞いてくれなかったの?」
綾は小さく首を横に振った。
「聞いてくれたけれど、何も言えないって。逃げていちゃだめだって言われた」
「そっか」
「わかってはいるのだけれど、子供を産めなかった負い目があるの。だから、わたしは彼には何も言えないよ」
綾は瞼を閉じ、じっと何かをから得るように大きく息を吸っていた。