恭&綾~【恭&綾シリーズ】1
注文したものにもほとんど手をつけないまま、ふたりはカラオケボックスのフロントに伝票を渡す。
恭司が財布から一万円札を出す。
綾はそれを恭司に返そうと差し出す。
「今日は、ほら、賞金で遊ぼうってことだし、いいよ」
「オレに出させて」
恭司はそのお金をまた、カウンターに戻す。
「でも」
「これくらい、させてよ」
恭司の少しむくれた表情に、綾は心が穏やかになっていくのを感じて、素直に自分の財布を仕舞った。
「じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとう」
「いえいえ」
恭司は満足そうに微笑んだ。