恭&綾~【恭&綾シリーズ】1
前に進むために
二人は並んで歩きながら、東北新幹線の下り線に向かった。
「綾はこれから、どうするの?」
「今晩は、もうビジネスホテルに荷物を置いてきているから、そこに泊まる。明日、家に帰るわ」
「そっか。大丈夫?」
綾は俯いて小さく頷く。
「何かのせいにして、自分を可哀想にしてしまっているのかもしれないって、心のどこかでは気付いていたと思う。やっぱり、そこから逃げていたんだと。彼がわたしのこと、かわいそうな奴って思うのは、そういう考え方をしてしまうわたしのことを言っているのかもしれないって」
「――そっか」
「恭のお母さんの話、羨ましいと同時に正直心が痛かったよ。なんていうのかな、自分の甘えを指摘されたような感じ」
綾は苦笑いをしてみせる。