先生の秘薬
久遠先生の部屋に

近づくと、ちょうど

久遠先生が部屋から

出てきた。


「あ、久遠ちゃん!
 ご飯行こうよ♪」


栞が元気を振り絞って

明るい声で言った。


「えぇ。僕も
 そう思って
 出てきたんですよ。」


久遠先生の笑顔は

私たちを気遣うように

いつもより

優しく感じられた。


そしてホテルから

近くのお店に入った。


「そういえばさ!
 久遠ちゃんって
 『私』って言ったり
 『僕』って言ったりするね!」


逢坂先生の

話題になるのを避けて

栞がそんなことを言い出した。


「あー・・
 ずっと『僕』を使って
 ましたからね。
 教師になってから
 職場ではなんとなく『私』を
 使うようになりました。
 『私』を使っているときは
 一線置いた感じかも
 しれませんね。」


「へぇ~
 使い分けてるんだ?」


「んー・・自然と・・・と
 言ったほうがいいかも
 しれませんね。」


久遠先生は少し苦笑いを

浮かべながら言った。


「そうなんだぁ~」


話しをふったのは栞なのに

すでに心ここにあらずな

返事をしていた。

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