先生の秘薬
翌日。

私たちは学園にいる

壬生先生を訪ねた。


前と同じ部屋へ案内され

壬生先生と向かい合った。


「陣之和香さんのこと
 教えてもらえませんか。」


私は誰よりも先に

口を開いた。


壬生先生は少し悲しそうな

笑みをうかべて私を見る。


「・・・陣之は
 クラスのカウンセラー的な
 存在だったよ。
 誰にも優しくて
 そして穏やかで
 考えもしっかりしていて
 大人びていた。
 男女問わずみんなが
 何かあれば
 陣之の意見を聞いたり
 相談したりしていた。

 ・・・担任ですらな。」


壬生先生は私から

視線をはずした。


「他には・・・。」


「あとはだいたい
 君たちが調べたとおりじゃ
 ないかな。
 俺もその程度しか
 知らないんだよ。」


「陣之さんが仲良かった
 生徒の名前わかりますか?」


「んー・・・
 ・・・春木かな。
 春木沙穂(はるき さほ)。
 どっちかっていうと
 春木が着いてまわってた感は
 あるけどな。」



「春木さん・・・。」


「君たちが調べた事件の後の
 逢坂先生は見てられなかった。
 もちろん学校側から謹慎を
 言われたのもあったが・・・。
 誰とも会おうとせず
 口もきかずでな・・・。
 食事もとってなかったし
 真っ暗な部屋の中で
 座ったままピクリとも
 動かないんだよあいつ・・・。

 さすがにマズイと
 思ってな・・・。
 それで伊波に託したんだよ。
 カウンセラーの資格も
 持ってるからな伊波は。
 で、結果的になんとか
 転勤だけでまぬがれた。
 それから伊波の
 カウンセリングの
 おかげもあって
 やっと今ぐらいまでに
 回復したんだ。

 ・・・しゃべりすぎたな。
 そろそろ行かないと。
 春木は自分の家の仕事を
 手伝ってるはずだから
 名簿に載ってる住所にいけば
 あえるはずだから。」



「ありがとうございます。」



壬生先生は

少しだけまた

悲しそうに微笑んで

部屋を出て行った。


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