先生の秘薬
「僕たちの目的は
 逢坂先生に何があったのか、
 それを知るために
 いろいろ調べています。
 そしてあの事件にたどりつき
 陣之和香さんのことを知りました。
 僕たちはあの事件のことを
 信じられません。
 逢坂先生がそんな人には
 思えないんです。
 だから陣之和香さんは
 どういう方だったのか
 知りたいんです。」


「・・・まるで和香が
 悪者みたいな
 言い方ね・・・。」


「そう聞こえてしまっても
 しかたないかもしれません。
 僕たちは陣之さんのことを
 知りませんから・・・。」


「和香は
 自慢の親友だった・・・。
 ・・・親友のつもりだった・・・かな。
 クラスでも学年でも
 和香を知る人は
 誰も彼女を悪く言う人は
 いなかったわ。
 まぁ高槻さんだけはあの和香でも
 接してなかったけどね。」


「高槻さん?」


「まぁちょっと変わった子でさ。
 悪い子じゃないんだけど
 なんていうかみんなとなじもうと
 しないって感じでね。
 和香ですら話しかけたのを
 見たことないかな。
 和香なら話しかけそうな
 感じなんだけどね・・・。

 和香の話しだったね。
 えーと・・・
 何を話せばいいの?」


「親友のつもりだったとは・・・。」



「あの事件が起きる前の和香は
 たしかに少し元気がなかった。
 けど私にはなんの相談もなかったわ。
 そして事件は起こる。
 一番仲がよかったからって
 いろんな人から話しを聞かれる・・・。
 和香にとって私なんて友達の一人に
 過ぎなかったのにね・・・。
 あの事件で思い知らされたんだ・・・。
 自分がいくら大切に
 思っている相手でも
 相手もそう思っているとは
 限らないってね。」



私たちは何も言えず

沈黙が流れる。


春木さんが軽く鼻をすする音だけが

響いていた。


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