先生の秘薬
「今まで
何人かの方を訪ねました。
けど、逢坂先生を
『先生』として呼ぶ人は
いませんでした。
春木さんの話しでは
あなたと陣之さんは
まったく関わってなかったと
聞きましたけど、いろいろ
聞いた陣之さんの人柄的に
まったく関わらないというのは
私には逆に不自然に感じたんです。
高槻さん、あなたは・・」
「あなた、和香に
似てるわ。」
私の言葉をさえぎって
高槻さんが言った。
「え?」
「自殺する前の和香の
雰囲気にね。」
少し悲しそうな顔で
微笑む高槻さん。
そして高槻さんは
言葉を続ける。
「ダメなんだよ・・・。
あなたたちじゃあ・・・。
・・・少し待ってて。」
高槻さんはそう言って
家に入っていった。
少しして高槻さんが
戻ってきた。
私の目の前に
1つのカギを差し出した。
銀色でかわった形のカギ。
私はカギを受け取る。
「すべての『カギ』に
なるといいんだけど。
あなたにとってもね。」
そう言い残して
高槻さんは家に入っていった。