先生の秘薬
車の中。


少しだけ

重い空気になっている。


その空気を打ち破ったのは

栞だった。


「ねぇねぇ!
 この辺に温泉とか
 ないの?!
 せっかくだし
 温泉入っていこうよ♪
 大きなお風呂で
 のんびりしたーい♪」



温泉・・・。


ふと胸の傷のことが

頭をよぎる。




「温泉・・・かぁ。」





久遠先生が

微妙な反応を返す。




「久遠ちゃんも
 温泉入りたいでしょ?
 ホテルのシャワーだけだと
 疲れ取れないよぉ~」




久遠先生が

チラッっと私を見る。



あぁ・・・

久遠先生、私のこと

気にしてくれてるんだ・・・。




「いいよ。
 行こう、温泉。」


少し微笑んで

栞に言った。


「やったぁ~♪」


栞がうれしそうに

はしゃいでいる。




私に付き合って

こんなところまで

来てくれたんだし・・・ね。




久遠先生が

少し沈黙した後



「わかりました。」



と優しく微笑んだ。

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