先生の秘薬
「おいこら。
 朝からサカってんじゃ
 ねぇぞ。」


私の太ももから

手が離れるのと

同時にそう聞こえた。


ゆっくり目を開けてみると

そこには・・・


「お、逢坂・・先生。」


痴漢の男の胸ぐらを

つかんで

今にも殴りかかりそうな

感じで睨み付けていた。


そして次の駅についた時


「次はないからな。」


そう低い声で

痴漢の男に言って電車から

痴漢の男だけを降ろした。


「大丈夫か?」


いつもの軽い口調ではなく

大人の口調で聞いてきた。


助けてくれたから・・・

モノから先生に一気に昇格・・・だ・・・

くやしいけど・・・。


「はい。
 あの・・ありがとう
 ございました。」


「いや・・・。」


逢坂先生はそう言って私の横に座り

前の窓からの景色を見ていた。

私は自分が思っている以上に

まだ恐怖から立ち直れていなくて

少し震えていた。

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