先生の秘薬
「・・・悠月。」


「・・はい。」


「・・・抱きしめては
 やれないけどな・・・
 手ぐらいなら
 握っててやるぞ。」


そう言った逢坂先生は

窓の景色を眺めたまま

とても悲しそうな顔をしていた。


私が心配で手を握って

あげるというよりは・・・


先生が握って

欲しいんじゃないかって

そう思えるぐらい

悲しい顔をしていた・・・。


私はそっと

先生の手に触れた。


先生が私の手を握ってきた。


けれど

目線は景色をとらえ

悲しい顔のままだった・・・。


きっと

先生にも

何かがあるんだね・・・。

私にカゲがあるというなら

先生にもカゲがあるよ。





私と一緒だね―――。


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