先生の秘薬
「なんとなく
 察しはついていると
 思うけど一応伝えるね。

 プールの授業だけど
 受けないのは
 何か特別な理由が
 あるのかな。

 女性の場合は
 いろいろデリケートな
 問題でもあるから
 僕に言いにくければ
 保健室の伊波先生でも
 いいんだけれど・・・
 伊波先生も男性だからね・・・。

 女性の先生に
 代わってもらうよう
 お願いしてもいいけど。

 担任の僕は
 最終的に知ってしまう
 ことだから
 まずはそのことだけ
 伝えようと思って・・・。」


優しい穏やかな

表情のまま話す久遠先生。

私が黙っていれば

久遠先生を困らせることに

なるだろう。


けど・・・

私はうつむいて

答えることができなかった。

時間だけが過ぎていく。


「じゃあ今日は
 これでおしまい。
 帰っていいよ。」


「え?」


思わず顔をあげて

久遠先生を見た。


久遠先生は

優しい微笑みを

崩していない。


「美倉さんが
 言いたくないのは
 それなりの理由が
 あってのことだと
 僕は感じてる。
 だから、美倉さんから
 話してくれるまで
 僕からは無理には
 聞かない。
 ただ、僕も一応
 教師だから・・・
 定期的に呼び出すことには
 なると思うけど・・・。
 それだけは我慢して
 くれる?」


「・・・はい。」


「うん。じゃあ
 気をつけて帰るんだよ。
 あ、もし違う先生が
 よければそう言ってね。」



私は席を立って

頭を下げて指導室を出た。


久遠先生は

微笑んだままだったけど

少し悲しそうな顔に見えた。



ごめんなさい久遠先生・・・。

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