先生の秘薬
少ししてまた

保健室のドアがあいた。


誰かが入ってきた。



「・・・悠月?」


「逢坂先生?」



カーテン越しの会話。


カーテンに逢坂先生の

シルエット浮かんだ。



「大丈夫か?」



落ち着いたトーンの声で

聞いてくる逢坂先生。



きっとあの悲しい顔を

しているんだね・・・。



私・・あの顔を見ると

胸が締めつけられて

苦しくなる・・・。



お願いだから

悲しまないで・・・。




逢坂先生は

カーテンの向こうで

立ち止まったまま

入ってこない。



「悠月・・・。
 お前の過去に
 何があったかなんて
 聞こうとは思わない。
 けどな、
 1人で傷つかないでくれ。
 頼む・・・俺は・・・
 お前を・・・悠月を・・・
 放ってはおけないんだ。
 この気持ちがなんなのか・・・
 俺自身もよくわからないけど・・・。
 俺は・・・。」




「おう・・さか・・
 ・・先生・・・。」



逢坂先生の

搾り出すような声を聞いて

私は泣きそうになった。


このカーテンは

私と逢坂先生の

『理性』

そんな気がした。



私は逢坂先生の悲しい顔を

見るのがつらい。



そして逢坂先生も

私の傷ついた表情を

見るのがつらいんだろう・・・。



きっと

このカーテンがなければ

私たちは抱きしめ合っている。






お互いの背負う悲しいモノを


感じ取りながら―――。


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