先生の秘薬
「僕を信じたくなったら
 いつでも保健室に
 来て下さい。」


「・・わからないんです。
 信じるとか・・
信じないとか・・・。
 友達も・・・
 よくわからない。」


「・・・そうですか。
 よかったら、
 これから僕とたまに
 話しをしませんか。
 いつでもいいです。
 気が向いたときにでも
 僕に会いに来て
 くれませんか。
 その目的が
 逢坂先生の過去を知る為
 でもかまいませんから。」


「・・・はい。」


「ありがとう。」



伊波先生は

いつの間にか

優しい笑顔に

戻っていた。



そして私の

マンションの前についた。



「そこのマンションなんです。」


「じゃあそこに車を
 止めますから
 少し待って下さい。」


「え?」


「ご両親に挨拶を
 しないといけませんから。」


「あ・・・。」


「どうしました?」


「えっと・・・。」


どうしよう・・・。

バレれる・・・。


「・・・わかりました。」


「え?」


「ご両親は
 留守だったことに
 しておきましょう。」


「・・え?いいんですか?」


「美倉さん。
 本当はよくありません。
 何かあれば僕はそれなりの
 責任を取らなければ
 なりません。」



「・・・・。」


「僕は
 美倉さんを信じます。
 『まずは自分が信じる』
 ですね。」



そう言ってまた

伊波先生は

優しく微笑んだ。


私は車から降りた。

助手席の窓が開いた。


「じゃあ気をつけて
 下さいね。
 さようなら。」
 

「ありがとう
 ございました。
 さようなら。」


私は頭を下げた。


そして伊波先生の

運転する車は

静かにその場から

走り去っていった。

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