先生の秘薬
「そして・・
 美倉さんのことも。
 僕は今、目の前にいる
 美倉さんを信じるよ。」


 

「・・・裏切られたら・・
 裏切られたらどうするの?」




「それは自分の
 見る目がなかったん
 だろうって反省するよ。
 僕は美倉さんを見て
 信じられると思ってる。」




「信じられない人は
 見捨てるの?」




「僕はまず・・・
 自分が傷ついても
 自分が信じることから
 始めるよ。
 たとえ裏切られても
 信じられないような人でも・・。
 まずは自分が信じなきゃ
 何も変わらないと思う。

 僕はこの考え方で
 僕がいけるとこまで
 いってみようと思ってる。
 たとえキレイゴトだと
 ののしられても・・・。」




そうか。

久遠先生は

わかっているんだね。



それでも

自分の考えを

貫きたいんだ・・・。



「・・・月曜の放課後に
 逢坂先生と
 一緒に指導室にきて・・
 もらえますか・・。」



「・・わかった。」



「じゃあ
 そろそろ時間だから。」



「うん。
 気をつけてね。」



久遠先生は優しく

微笑んでくれた。



私は頭を下げて

その場から立ち去った。




久遠先生はまだ

ベンチに座ったままだった。

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