あおぞら。
来た。
来てしまった。この質問。
質問される前に言えば良かったなー、と軽く後悔する。
自ら言うより、聞かれて答える方がよっぽど惨めだ。
「あー、えっと…そうですねーわたしは、その………処女なんで」
沢田さんの切れ長の目が丸っこく見開かれる。
「…マジ?」
「経験済みに見えるなら嬉しいです…」
「だってそんな服着てるし、経験済みに見えるよ」
心底驚いたらしく、沢田さんはしばらく「マジかー処女かー、藤堂さん処女かー」とあまり連呼してほしくない事実をぶつぶつ言っていた。
「まぁ、藤堂さんにも良い人が現れるよ!」
最後に沢田さんはわたしに気を使ってか、その言葉で下ネタを締めくくった。
沢田さんはそう言っていたが、その“良い人”が沢田さんになるのではないか、とその時から薄々感じていた。