キミに会いたい
「こんにちは!夜城さん、居ますかー?」
暖簾を両手で除けながら、店の中に入ったが目的の人物が見つからない。
「あれ?夜城さん‥?どこ?」
店内をキョロキョロ見回しながら奥へ進むと、
採りたての野菜を桶の中で土汚れを落とす作業中だった彼が、そこに居た。
「こんにちは、夜城さん!手伝いましょうか?」
返事を聞かずに彼の横に立って同じように大根を洗っていると、彼が口を開いた。
「‥僕、春乃さんに好きな人が出来るまで諦めないので。」
隣に居る彼を見上げると距離を縮められ、至近距離で見つめられた。
「えっ?本気なの‥?」
大きな瞳に見つめられ、戸惑っていると彼は優しげに微笑んで、そっと私の額に唇を触れさせた。
「っ‥本気だよ?これでも分からないかい?きっと渉も同じようにしたんだろうね、額に口付けを‥」
「なんで、それ‥!」
「額に口付け、その意味分かるかい?」
まっすぐ見つめてくる彼に恥ずかしくて耐えれなかった私は少し目線を逸らした。
そんな状態で、答えない私に夜城さんは
ゆっくり私の顎を掴んで目線を合わさせて、こう言った。
「忠誠って意味だよ。分かりましたか?それだけ春乃さんに対する想いは真剣なんです。ただ、今は何かと物騒ですからね。僕が貴女を守ります。」
「夜城さん‥」
真剣な眼差しに、想いを振り切れなくなった私は頷くことしか出来なかった。
「さて、春乃さん。話は変わりますが‥明日の朝から看板娘の仕事、お任せして良いですか?僕は仕入れや帳簿の仕事で忙しいので。」
「は、はい!お任せ下さい!」
夜城さんの笑顔に先程の雰囲気は消えて肩の力が抜けてホッとした私は、笑顔で答えた。
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