キミに会いたい
八百屋から帰宅後、渉が寝室で寝ていた。
「渉、ただいま。まだ夕方なのに寝るの早いね。」
「春乃の夕飯待ってたんだよ。腹減ったから寝てた。」
布団の上で寝ていた渉は、起き上がって私の方に体を向けながら仏頂面のまま不機嫌そうに言った。
「‥どうしたの?渉。」
寝室に入り、畳の上に座って渉に話しかける。
「真のやつ、お前の事は諦めないとか言ったんだろ?幼なじみだから分かるんだよ。でも、春乃は渡さねぇ。」
「なに、ヤキモチ妬いてるの?渉ってば。」
あまりの可愛いさにクスクス笑っていると、
グイッ――――
腰を抱き寄せられて渉の胸に抱きつく形になった。
「きゃっ‥!ちょっと、渉‥?」
至近距離で見る相変わらず整った顔つきの渉を見上げた。
「春乃は、真を好いてるのか?」
低くて透き通った声が部屋に響く。
哀しげな表情を浮かべて見つめてくる、渉に私は首を横に振った。
「違うよ、渉。私は今好いてる人居ないわ。心配しないで、ね?」
私の返答に安心したかのような表情になるが、途端に眉間に皺を寄せる渉に私は苦笑いした。
「じゃあ、俺の事も好いてないってことじゃねぇか?」
「あ、気づいちゃった?」
「気づいちゃった、じゃねぇよ。」
そう言った途端、だんだんと近づいてくる渉の様子に後退ろうとするが布団の上に押し倒されてしまった。
ちょっと、これはヤバくない‥?
「春乃‥…。」
熱を帯びた瞳で見下ろしてくる渉は着物が多少着崩れていて色気がハンパなく出ている。
ダ、ダメだって‥!ピンク色の雰囲気出しちゃ!
お互いの唇の距離、わずか1cmとなった瞬間―‐‐