あの時も、これからも
はあ、と呆けたように頷くしるふに

「少し時間ある?お土産があるのよ」

と意味深にほほ笑む

「あ、じゃあ医局長に言ってきます。先にラウンジに行っててもらっていいですか」

医局を指さしながらしるふがいうと了解、とうなずいた芳川は、さっさと背を向けて歩き出す

その背と3年ほど前にアメリカにわたるといって去って行った背が重なる

その凛とした雰囲気はこれっぽっちも変わらない

けれど

「…きれいになったな、芳川さん」

さらに磨きがかかったような気がする




「にしてもまだ救命医を続けてるなんて物好きね、あなたも」

医局長に少し抜けると告げて、ラウンジに言ったしるふに開口一番

芳川はあきれたようにつぶやく

「アメリカでバリバリ働いてる芳川さんに言われたくないですよ」

そう?と首をかしげる芳川

「ま、そんなことどうでもいいのよ」

カフェラテを一口含んでからそっと足を組み替える

「あなた、相当ひどい顔してるわよ。自覚、ある?」

綺麗に眉を寄せて言われてもむっとしないのは、たぶん芳川の口調から心配が感じ取れるから



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