あの時も、これからも
「ねえ、そうだ、海斗」

ドイツの街中を二人でふらふら歩いていると、物珍しそうに家々を見上げていたしるふがふと視線を投げかけてくる

「昨日一緒にいた人誰?」

目だけで応じる海斗に気にする様子もなく、しるふは思い出したように疑問を投げかけた

「…昨日?」

誰を指しているのかわからず海斗は眉を寄せる

「ほら、私が病院に行ったときに海斗の後ろにいたじゃない。日本人っぽかったな、あれ、誰?」

病院、後ろ、日本人

昨日しるふが病院に来た時のことを順々に思い出していた海斗は、その3つの単語で

「ああ、春日部か」

と合点する

「春日部ってことは、やっぱり日本人か…」

日本人となると海斗のことを知っている可能性はぐんと高くなる

別に海斗のことを疑っているわけではないけれど、繊細な女心はちょっとちくちくと心地よくない感情を抱いてしまうものだ

まだまだ若いな、自分

「…浮気だよー、海斗」

いじけたようにうつむいたしるふは、もちろんちゃんといじけていてコンコンと石の坂道をつま先で突く

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