あの時も、これからも
「またそうやって…」

一応これでも「恋人」から「婚約者」に格上げになったというのに、小さいことを気にする、というか突っかかってくるしるふに、すでにあきれた心境だ

「だって、結構きれいな人だったもん。浮気だよ、浮気」

海斗は最近、しるふの中の「浮気」の定義を疑い始めている

この間も宮部智香を浮気カウントしてやる、とぶつぶつ言われたし

春日部に至っては下心の「し」の字もない、お互いに

のに、浮気だー、と(冗談交じりだが)に言われるのは心外だ

まあ、小さなヤキモチと考えればかわいいのだが

そうそう浮気カウントを数えられていたのではたまらない

こっちは少しも揺らいでなどいないのだから

「綺麗ねー、きついの間違いじゃないのか」

春日部桃花の性格を知っているためか、海斗にとって春日部は綺麗というより見た目きつい、近寄りにくい女だ

「そこがきれいだって言ってるの。働く女!って感じでさ。かっこいいじゃん」

「まあ、春日部桃花っていう名前のくせに男を足蹴にするくらいだからいい性格はしてると思うけど」

「海斗墓穴掘ってるー。人の名前覚えないくせにフルネーム言えちゃうって疑うよ?」

「心外な。これでも必要だと思った人の名前はちゃんと憶えてる」





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