あの時も、これからも
時々すねるように、冗談交じりに「浮気だー」ということはあるけれど、お互いに本気じゃないのを分かっているので一種のコミュニケーションとなっている

我ながら不思議なコミュニケーションの取り方だとは思わないわけでもない

しるふがここまですねるのは…

あれか、やっぱり一年間遠距離という状況のせいか

となるとその状況を作りだした自分が折れるべきか…

といってしるふが折れたことはなかったと思うんだが…

ここで喧嘩するのは馬鹿げているし

しるふはただすねているだけだし、半年一人で頑張ったと思えば譲歩してやるのは、やっぱり自分だろう

などと視線を下げて歩くしるふを横目に沈黙の中考える

そうやって自分が譲歩してやること幾星霜

やはりこのじゃじゃ馬姫君には敵わないらしい

はあ、と息をつき、しるふのさらさらの髪を撫でる

それに気が付いたしるふが視線を上げて、澄んだ輝きを放つブラウンの瞳が見つめてくる

そのまま撫ででいた手を少し下にずらしてしるふの後頭部から首を支えると少し身をかがめて触れるだけのキスをする

「ちょっと、海斗、人前」

「誰も見てないって」

そういう問題じゃないよ、たぶん…

と、照れていたしるふも海斗と目が合うとすぐにほほ笑む

本当に素直じゃない



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