あの時も、これからも
「……墓」

手をつなぎながらゆっくりと歩いたら海斗のつぶやきが沈黙を破った

「墓?何、新婚しょっぱなから冠婚葬祭の準備?せめて保険位にとどめておいてくれないかなー、海斗君」

驚いたように見上げてくるしるふの言葉に海斗が眉を寄せる

「違う。帰ったら墓参り、行かないとなって」

しるふのご両親に挨拶しないといけないだろう?

「確かに、最近行ってないんだよね。父さんびっくりするだろうなー」

母さんはウエルカムだろうなー

あまり記憶には残っていないけれど、父親には末っ子ということで、しかも女の子ということでけっこうかわいがられた記憶がある

それが嫁に行くなんてなったら化けて出てくるかも

出てこられても視えないんだけど…

「あのさ、…入籍、の日なんだけど」

言いにくそうに途切れ途切れに言葉を紡ぐ

「3月の記念日じゃ、ダメかな?」

付き合い始めた記念日

その日を結婚したからといって消したくない

でも祝いの日をたくさん作るのも

だから、そのままその日を特別な日にしたい

照れているのか目を合わせてこないしるふに海斗はふと微笑む

「いいよ。遅くても3月の上旬には帰れるだろうから。しるふの家に挨拶行って届ければ大丈夫だろう」
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