あの時も、これからも
不満そうな声で言うしるふに

「そうじゃなくて」

折れかかった話の腰を戻そうと海斗が真面目な声で告げる

「こないだ少しばかり面倒なことが起きて、もしかしたらとばっちりがいくかもしれない」

だから初めに謝っておく

「何―?今度は誰-?」

「望月がここに来て現れた」

望月…望月…

どこかで聞いたな…

「ああ、望月花蓮さんだっけか?海斗の幼馴染の」

「幼馴染というほど幼少期を過ごしてはいない」

それだけは訂正しておきたかったらしく、海斗の少し嫌そうな口調が聞こえる

「わかった、わかった。でも、珍しいね、海斗が私のこと公言するなんてさ」

今までは恋人がいるのかと聞かれてもはっきりということはなかった海斗

告げたら当然矛先が向くであろうしるふの守るためだと知っていたから、海斗がしるふの存在を認めることは本当に珍しいのだ

「まあ、これでも腹くくったから」

「へえ、奇遇。私も腹くくったんだ」

へへっと笑いながらしるふが少し照れくさそうに笑う

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