あの時も、これからも
これまでは恋人だったから海斗自身が公言しなければ、しるふの存在はばれることはなかった

それはつまり海斗に向けられるいろいろな視線からしるふを守れるわけで

でも、ずっとそのままでいるわけにはいかない

ずっと恋人同士を続けていくわけにもいかないし、面倒だからと言って黒崎病院を野放しにしておくこともできない

これからは、しるふを正面切って恋人だと言えるように、その上で降りかかってくるであろうしるふへのあてつけからしるふを守れるように

でも、多少のことではきっと揺らがないしるふをもっと信じていこうと

腹をくくったのだ

「大丈夫だよ、海斗。そんな簡単に折れるほどかわいい女じゃないからさ、私」

しるふの凛とした声が響いて、海斗は静かにほほ笑む

「ああ、わかってる」

海斗のはっきりとした返答にしるふがうれしそうに笑う

「あ、そうだ、海斗、あのねー」

確かに、恋人同士ならずっと海斗の後ろに隠れて、ああ、また海斗に女が寄って来たなって思っているだけで済む

でもそれじゃダメなんだ

海斗に守られてるだけじゃ何のために二人でいるのかわからない

海斗は絶対に揺らがない、「愛してる」の言葉に嘘はない

だから今まで以上に降り注ぐであろうやっかみも嫉妬も全部はねのけてやろうって

何があっても海斗を信じると、もっと海斗の支えになろうと

腹をくくったのだ
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