あの時も、これからも
「ちょっと、園ちゃん!」

「黒崎って、あの黒崎病院御曹司?」

「そーです、世界からも注目を集める凄腕医師、黒崎海斗その人です」

藤宮は、一瞬瞳を細めると苦笑する

「確か今ドイツにいるって」

「そーですよ。だから私が立花先生を守ってるんです」

園田がふんと偉そうに胸を張る

「…そっか、じゃあ立花には手を出せないな」

何かを悟ったようにふと目を閉じて、静かにそうつぶやくと優しい笑顔をしるふに向けてくる

「さすがは我がゼミのマドンナ、だな」

頑張れよ

そう言い残して藤宮は背を向ける

「え?藤宮先輩?」

人にまぎれていく背に呼びかけるが、藤宮は振り返ることはない

頼りなく伸ばした手が宙を舞う

「……立花先生」

浮かせた手のやり場に困っていると、隣からちょっと低い園田の声がする

呼ばれて振り向くと目の座った園田と視線がぶつかった
< 182 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop