あの時も、これからも
「わかってますよね?わかってましたよね!?」

「ええと…」

何がでしょう、そう問いたいのはやまやまだけれど、そんなこと言おうものなら確実に火に油を注ぐ形になる

「もう、ほんと立花先生は鈍感です。黒崎先生の気持ちがよーくわかりました」

これじゃおいそれと目を離すわけにはいかないだろう

ほんの少し、一瞬気を抜いただけでもしるふはどこかにひらひらと飛んで行ってしまいそうだ

まるで蝶のように

風に舞う桜のように

自由に羽を伸ばす鳥のように

はあ、と息をついてから

「いいですか、立花先生。たとえ知り合いであっても話しかけてくる男には下心があると思って接してくださいね」

10センチほど高いしるふを見上げて園田が念を押すように言う

「いや、…それは、ちょっと…」

やりすぎなんじゃない?と言いかけて、園田の目がさらに座ったことに気が付いたしるふは、「わ、わかった。気を付けます」と言い直した

そんなに自由に羽ばたいているつもりはないのだが…
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