あの時も、これからも
新年会も中盤を迎え、出来上がってくる人もちらほら見受けられるようになってきた

ふう、と近くの化粧室に行っていたしるふは、大ホールまでの廊下を息をつきながら歩く

ホールの中とは違って静かな廊下は、どこか別の世界に来たかのようだ

新年、と言えば去年のお正月に初めて海斗の実家に行ったなーと思い出す

あの時、海斗の姉・沙希に「3年も捕まえておいたんだもの、責任とってね」と満面の笑みで言われた

捕まえられているのはこっちの方だ

今まで年下のちょいとプレイボーイ系の人とか年上の物腰優しそうな人とかに言い寄られたこともあったけど

想いが揺らいだことはない

そりゃ言い寄られれば、(あれだけ直球で)気づくし、ちょっとどきどきする

でも海斗がもたらしてくれる愛しさや優しさや、温かさには敵わない

不満や不安ならあるのに、それが日々の小さな確執を餌に大きくなることを海斗は許さないのだ

言葉や態度はそっけないくせに、女心なんて米粒ほども理解していないくせに

見えないところで、見えにくいところで大切にしてくれる

それに気が付いたら、もう、あの腕から抜け出すことはできない

あまりに居心地がよくて、違うところに羽ばたいて行こうなんて思わない

ああ、早くあの腕の中に戻りたい…

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