あの時も、これからも
横にあったテーブルの上に袋を置いて、両手で涙をぬぐうしるふに変わらぬ愛しさを覚えながら優しく引き寄せる

嗚咽を漏らしながら海斗の背にしっかりと腕を回すしるふの、その細い体をしっかりと抱きしめる

ふわりと香るカモミールの香りに

変わらないぬくもりに

ああ、やっと帰ってきたのだと実感する

一年前、もしかしたらもう二度と抱きしめることはできないかもしれなかったその華奢な体を、もう離すことはないその手を今ならしっかりと受け止めることができる

この手をもう一度つかむために

もう二度と離さないために

二人で同じ未来を歩むために

過ぎ去った一年を想う

そのためだと考えるなら一年など小さなものだ

こうしてしるふは、自分の腕の中にいるのだから

「……海斗」

ゆっくりと息をしながらうるんだ瞳で見上げてくるしるふの口元に笑みが宿る

「……お帰りなさい」

ブラウンの瞳が宿す優しい光を見つめながら海斗も微笑み返す

「ただいま」

しっかりとそうつぶやいて、二人で額を合わせる



笑いあいながら唇を重ねる二人を見つめていたのは、一輪の真紅の輝き

贈られた一本のバラの花言葉は、

一生貴女を愛し続けます

無言の、形ある誓いだった

 
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