あの時も、これからも
「どんな泣き方だよ」

怪訝そうに眉を寄せる海斗を、腕に抱かれた祈がそっくりの瞳で見つめてくる

周りはそろって祈は海斗似だと言ってくるけれど、

海斗にしてみればそれは見た目の問題で、中身はしるふそっくりだ

その無自覚を体現した瞳とか、甘え上手なところとか

すぐすねるところとか

要は、その瞳に逆らえたことは一度もない

「え、だって事実だもん。知ってるでしょ?祈がおなかにいた時、海斗が少しでも帰るの遅くなるとぼんぼん蹴ってきてたの」

いやー、大変だったわ

と、すでにその当時のことを懐かしそうに思い出す

「ま、母親の言うことが正しいか」

そういって祈を片腕で抱き、しるふを伴って部屋にある大きなソファの真ん中に座る

膝の上に座らせて、柔らかい頬に手をやると、

その手を祈が追いかけてきて、その小さな手でぎゅっと握る

海斗の肩にもたれたしるふがその様子に微笑む

海斗が留学から帰ってきて、半年かけて準備したドレスや式場での最終確認をし、3月中に入籍して挙式

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